
歯科矯正を受けようと思っている方の中には、費用を心配している方々も少なくないと思います。原則として保険診療の適用外である歯科矯正の治療費は高額になりがちです。そのため、少しでも経済的な負担を減らすために活用できる制度をきちんと理解しておくことが大切です。以下では医療費控除についてご説明し、その控除対象や申請の流れに関してもご紹介します。
医療費控除とは?
医療費控除とは上限を200万円として、1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告を行うことで超過分について所得控除を受けることができる制度です。所得控除とは、税金を計算する際に基準となる課税所得に含めなくてよいという仕組みです。
手続きに関しては下記で詳述しますが、簡単にいえば医療費控除の申請をすれば所得税と住民税の一部が還付されるということです。歯科矯正の場合は、症状によりますがかなりの割合で医療費が10万円を超えることが考えられるため、医療費控除を活用しない手はありません。
歯科矯正で医療費控除は受けられるのか
問題はどんな場合でも歯科矯正をすれば医療費控除を受けられるのか、ということです。重要なポイントはその歯科矯正が審美目的ではなく、歯並びの悪さが原因で発音や咀嚼に影響を与えており、それらの機能回復のための治療かどうかという点です。それを判断するのは治療を受ける側ではなく、治療する側の医師であり、最終的には管轄税務署です。
一般的に子どもの歯科矯正は見た目をきれいにするというより、咀嚼や発音、顎関節の発育などを考慮した治療目的の場合が多いでしょう。そのため医療費控除が受けられる可能性が高いといえます。大人が審美目的のために歯科矯正をする場合は、医療費控除の対象外になる点を覚えておきましょう。
医療費控除できる費用
以上を前提にして、医療費控除できる費用について具体的にどんなものが含まれるのかご紹介します。
■診療費、治療費
■治療目的のセラミック治療
セラミック治療は歯並びを変えるというより、歯の表面にセラミックを被せたり、詰め物をセラミックに変えたりする治療です。一般的には審美目的で行われることが多いですが、噛み合わせを整えるためなど治療目的であれば医療費控除が認められる可能性があります。
■子どもの矯正治療
上述の通り、子どもの矯正治療の場合審美目的であることが少ないため、医療費控除が認められる可能性が高いです。
■成人の噛み合わせ機能改善などが目的の矯正治療
各人の症状はさまざまで、それに合わせた治療法も千差万別ですので、一口にどこまで医療費控除が認められるか明確な線引きは難しいといえます。実際の治療に入る前に歯科医と相談して、医療費控除の対象になるか確認するとよいでしょう。
■通院にかかった交通費
治療目的と認められた場合、通院にかかった交通費も医療費控除に含まれます。
■歯科医院で処方された医薬品
以上に挙げた費用を一括で現金払いではなく、クレジットカードやローンで支払う場合も医療費控除の対象になります。ただ、医療費控除の申請の対象になるのはローン契約が成立した年であることにご注意ください。
医療費控除できない(自己負担になる)費用
上述したように審美目的の医療費は控除できません。具体的には以下の費用が含まれます。
■歯のホワイトニング
■予防目的のクリーニング
■歯ブラシなどのケア用品の費用
■ローンで治療費を支払う場合の利子
■自家用車で通院した場合のガソリン代、駐車代
医療費控除の手続き
どのような費用が医療費控除の対象になるかご理解いただけたかと思います。以下ではどのような手続きで医療費控除の手続きを進めるのかご紹介します。
1年間の医療費を計算する
医療費控除の手続きは確定申告の際に行います。確定申告の時期は原則として毎年2月16日~3月15日までの1ヵ月間ですが、給与所得者による医療費控除の還付申告に関しては1月1日から申告ができます。できれば税務署が混雑する前に、早めに申告を済ませておくとよいでしょう。
確定申告を行っている年の前年(2022年に確定申告を行っているのであれば2021年)の1月1日から12月31日までに使った医療費の合計を計算します。申請者本人だけでなく、同一生計とみなされる家族全員の医療費は一緒に処理できます。
医療費控除額を計算する
次にいよいよ医療費控除額を計算します。以下の計算式を参考にしてください。
(支払った医療費の合計-保険金等で補填される金額)-10万円または所得金額の5%※
※10万円または所得金額の5%はどちらか少ない額を控除します。
所得税率を確認する
所得税率は課税所得によって異なります。課税所得とは、給与所得控除後の金額から所得控除の合計(基礎控除、配偶者控除)を差し引いた金額です。課税所得と税率の関係は以下の表のとおりです。
課税所得 | 税率 |
---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
出典:国税庁 所得税の速算表(令和2年4月1日現在法令等より)
還付金を計算する
医療費控除額に所得税率を掛けた金額が還付されることになります。
還付金の処理方法ですが、所得税の場合は確定申告の際に申告し数ヶ月後に指定した口座に振り込まれ、住民税はその年の分が調整されます。
医療費控除の注意点
使った医療費を計算するためには領収書やレシートが必要です。治療後にレシートや領収書を受け取ったら、あとで医療費控除を申告することを念頭において所定の場所にきちんと管理、ファイリングしておくようにしてください。年度末に医療費控除の申告をしようと思い立ってあわてて探すことのないようにしましょう。
医療費のレシートだけでなく、医療費控除の手続きには以下のような資料が必要になります。あわせて、受け取ったら所定の場所に管理しておくとよいでしょう。
・源泉徴収票
・歯科矯正の診断書
・保険金で補填された場合、それを証明するための記録
・ローンで支払う場合はローン契約の写し
確定申告には書面を作成し、直接税務署に持参する方法、郵送もありますが、インターネット送信によって自宅から送信できる電子申告(e-Tax)も便利です。e-Taxのメリットは、税務署に持参する場合のように受付時間に制限がないこと(24時間365日受付可能)、通常より還付金の振り込みが早いことです。
e-Taxには「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」と2種類の申告方式があります。「マイナンバーカード方式」を選ぶ場合には、前もってマイナンバーカードを取得しておく必要があります。手続きには時間がかかる場合もあるため注意が必要です。加えて、マイナンバーカードの電子証明書を読み込むためのカードリーダーかスマートフォンも必須ですので、あわせて確認するようにしてください。それに対して「ID・パスワード方式」を選ぶ場合も事前に税務署で本人確認をして、IDとパスワードを発行してもらわなければなりません。
医療費控除の計算方法
ご紹介した方法に基づき、実際にご自分の手元に所得税、住民税がいくら還付されるのか計算してみましょう。
例:Aさんは年収500万円で子どもが2人、妻は専業主婦。1年間にかかった医療費60万円だが、医療保険から5万円補填された。
①医療費控除額を計算
60万円(1年間にかかった医療費合計)-5万円(医療保険等で補填された金額)-10万円=45万円
②所得税率を計算
500万円(給与収入)-144万円(給与所得控除額)=356万円(給与所得)
356万円-86万円(基礎控除48万円+配偶者控除38万円)=270万円(所得金額)
所得金額270万円の場合、上記表によると所得税率は10%です。
③還付金を計算する
所得税:45万円(医療費控除額)×10%=45,000円
住民税:45万円(医療費控除額)×10%(住民税は所得に関わらず同率)=45,000円
まとめ
以上、歯科矯正の治療費が医療費控除になる判断基準、具体的な手続きや計算方法についてご紹介しました。歯科矯正の治療費は高額になりがちですが、そのために矯正をあきらめ、日常生活に支障が出てしまうのは残念なことです。とりわけ子どもの場合はその後の健康な発育や対人関係にも影響する可能性がありますので、経済的な負担はあるとしても、医療費控除の制度を活用することを前提に歯科矯正を検討してみてはいかがでしょうか?
医療費控除に関してさらに不明な点、不安や悩みがある場合は、歯科医院に直接相談してみることをおすすめいたします。
東京先進医療クリニックについて

「治療中の苦しさや恐怖心は仕方がない」「歯科へは何度も通うもの」と思っていませんか?東京先進医療クリニックでは、患者様のストレスに徹底的に寄り添うことに努めています。全身麻酔による歯科治療が可能であることも、そのうちの一つです。
先進的な機器を揃えた設備と高度な技術を持った医師、スタッフ一同でご来院お待ちしております。
監修ドクターの紹介

学歴
2003年 愛知学院大学歯学部 卒業
経歴
2003年 医療法人林歯科医院 勤務
2009年 ロイヤルデンタル林 開業
2016年 中之島デンタルクリニック 院長
2018年 東京先進医療クリニック 入職
資格
Invisalign CERTIFICATE
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