後悔したくない!インビザライン矯正ができない難しい症例について解説
最終更新日:2023.3.2

後悔したくない!インビザライン矯正ができない難しい症例について解説

インビザラインはマウスピース矯正の1つであり、目立ちにくいのが特徴です。また、全世界で1200万人以上の使用実績があり、検討している人も多いかもしれません。しかし、全ての症状がインビザライン矯正に、対応しているわけではありません。ここでは、インビザライン矯正ができない難しい症例について、またその場合の対処法について解説します。

インビザライン矯正ができない難しい症例

歯科矯正には大きく分けてワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正があります。それぞれに特徴があり、治療しやすい症例が異なります。インビザラインはアメリカのアライン・テクノロジー社が開発した、カスタムメイド型のマウスピース矯正です。
インビザラインが世界中で、多くの患者の支持を受けるには理由があります。その大きな理由の1つが、目立ちにくい点です。マウスピースは透明であるため、常に装着していても他の人から分かりにくく、見た目を気にする必要はありません。加えて、患者にとって効率がいい矯正方法をパソコンでシミュレーションし、約2週間ごとにマウスピースを交換しながら、歯を動かしていきます。
また、後述のワイヤー矯正と比べて矯正装置に金属を含まないため、金属アレルギーの恐れがありません。さらに歯磨きの際はマウスピースを外せるため、ワイヤー矯正のように矯正器具のデコボコが気になり、歯のケアがしにくいこともありません。

しかし、その分だけ自己管理が求められるのも、インビザライン矯正の特徴です。取り外しできますが、常に取り外していると矯正効果が表れません。一般的には1日のうち、20時間以上の装着が必要だといわれています。また、インビザライン矯正の場合は歯科医の指示に従って2週間に1回の交換が必要なため、こまめな通院が必要といえます。
インビザラインの別のデメリットは、ワイヤー矯正に比べて対応できる症例の範囲が狭い点です。つまり、インビザラインにも矯正ができない難しい症例もあるのです。以下、具体的な症例について説明します。

重度の出っ歯

通称「出っ歯」は、専門用語で「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれ、上の前歯、あるいは上顎が前方に突出している症例を指します。上顎前突の原因として約70%が、下顎骨の小ささによるアンバランスな状態という報告も上がっています。
矯正せずにそのまま放置すると噛み合わせが悪く、食生活への影響が懸念されます。また、常に上の歯が突き出ている状態のため、転倒時に歯が折れるリスクがあるのです。さらに見た目のコンプレックスから、対人関係やコミュニケーションへの影響も考えられます。
この症例を矯正するのに、インビザラインでは限界があります。マウスピースを作成して歯並びをきれいにはできますが、根本的な矯正は困難です。なぜなら、重度の出っ歯の原因は単なる歯並びというよりも、骨格の場合が多いからです。

重度の受け口

受け口とは、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前に突出している状態を指し、専門用語では「下顎前突(かがくぜんとつ)」といいます。重度の受け口は前歯だけでなく、下顎そのものが前に出ています。
受け口の原因は遺伝だけでなく後天的な習慣も関係おり、特に口呼吸によって引き起こされることが多いといわれています。成長期に鼻炎などの鼻詰まりがきっかけで、口呼吸が癖ついてしまうと、舌が落ち込み気道を圧迫します。その結果、呼吸が苦しく下顎を前に出して呼吸するようになると、上顎に対して下顎の成長が進み、骨や筋肉もそれに合わせて変化していきます。こうした変化は、成長期の子どもだけに生じることではなく、大人にも起こりうることです。
重度の受け口も歯並びの問題だけでなく、骨格そのものにアプローチすることが必要であるため、インビザラインでの矯正は難しいといえます。

重度の叢生(そうせい)

叢生とは、歯が凸凹に生えている状態を指します。真っすぐ打ち込まれず、乱れた杭(くい)のようにも見えることから「乱杭歯(らんぐいし)」とも呼ばれます。
叢生の原因は遺伝に加えて、幼少期に永久歯がうまく生えそろわなかったり、指や舌を噛む癖があったり、後天的な要因も考えられます。
叢生を放置すると数々のリスクがあり、例えば噛み合わせが悪いため、食習慣への影響が懸念されます。
また、凸凹になっている歯の隙間に食べ物が詰まりやすい、ブラッシングがしにくいなど、虫歯や歯周病を招く恐れもあります。また、見た目が気になり、人と話す際に自信が持てない人もいるようです。
軽度の叢生であれば、インビザラインで矯正可能ですが、重度の叢生はインビザラインでの対応が困難な場合もあります。なぜなら、叢生は歯のスペースが不足して起きるため、抜歯が必要になるからです。そして、抜歯の数が多くなるとインビザラインでは治療ができないのです。

重度の歯周病にかかっている

歯周病とは歯と歯茎の間(歯周ポケット)に細菌が侵入し、歯肉や歯を支える歯槽骨を溶かしてしまう病気のことです。歯と歯茎のケアが不十分だと歯垢が増えていきますが、その中には数多くの細菌が含まれています。また、歯垢を放置していると、唾液に含まれるカルシウムやリン酸と結合してより強固な歯石になり、細菌の増殖がさらに進んでしまいます。細菌は絶えず歯周組織に炎症を起こし、破壊していきます。
歯周病が進むと、お口だけではなく体全体にも影響がでてきます。炎症によって発生する毒性物質は血管を通って全身を巡り、糖尿病や肥満、心筋梗塞や脳血栓にも関与するといわれています。
重度の歯周病とは、歯周ポケットの深さが6mm以上の状態を指します。歯茎だけでなく、それを支える顎の骨まで溶かされ、歯が抜けるリスクが高まります。また、歯のぐらつきがひどいため、食事をするのにも不自由を感じたり、口臭も強くなったりします。
重度の歯周病にかかっている場合も、インビザライン矯正は困難です。なぜなら、歯科矯正は顎の骨に埋まっている歯を、人為的に移動させる治療のため、顎の骨が正常で健康であることが前提だからです。重度の歯周病によって顎が溶かされている状態では、歯を支える顎の骨がきちんと再生できない恐れが高いです。インビザライン矯正の前に、まずは歯周病の治療から始める必要があります。

必要な抜歯の数が多い

重度の叢生の場合、抜歯が必要であると述べました。他にも歯が本来の向きからねじれるように生えている捻転歯(ねんてんし)や、歯が歯列からはみ出した転位歯(てんいし)を、元に戻そうと矯正する場合にも抜歯が必要です。その目的は、歯を動かすためのスペースを作ることです。
抜歯の数が多ければ、その分そこに歯を大きく移動させなければなりませんが、その場合はインビザライン矯正だけではなく、後述するワイヤー矯正との併用が適しています。

インプラントが多数入っている

インプラントとは、顎の骨に生体親和性の高いチタンや、チタン合金でできた人工歯根を埋め込む治療法です。多数のインプラントが入っていると、インビザライン矯正は困難です。
インビザライン矯正で歯を動かすには、歯根膜が欠かせません。この歯根膜の働きによって、歯の周りの骨を少しずつ破壊し、再生することで歯を移動させます。しかし、インプラントの周りには歯根膜がありません。そのため、インビザライン矯正で歯を動かすことができないのです。

その他

他にも、インビザライン矯正が難しい症例に、「過蓋咬合(かがいこうごう)」があります。「ディープバイト」とも呼ばれますが、歯をかみ合わせた場合に下の前歯が見えなくなるほど、上の前歯が覆いかぶさっている状態を指します。過蓋咬合の根本原因も、顎の骨です。そのため、インビザライン矯正で歯並びだけ整えても不十分であり、外科的な手術が必要になります。
また、何らかの理由で歯が埋まっている埋伏歯(まいふくし)の場合も、インビザライン矯正は困難です。インビザラインは、歯にマウスピースを装着することで矯正を行いますが、埋伏しているとそれが難しいためです。

インビザライン矯正が難しい場合の治療について

インビザライン矯正が難しい状態を挙げましたが、その場合は他の矯正方法で対処が可能です。以下では、別の矯正方法について説明します。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正とは、ブラケットと呼ばれる装置を歯に装着し、ワイヤーを通してその弾力性で歯を移動させる矯正方法です。

■ワイヤー矯正のメリット
矯正方法の中でもっとも歴史があり、豊富な実績があります。ワイヤーによって大きな力をかけて、歯を大きく移動させることができるため、幅広い症例に対処できるといわれています。また、マウスピース矯正と異なり、いったん装着すれば自己管理が不要です。

■ワイヤー矯正のデメリット
矯正装置が目立ちます。また、食事の際に矯正装置に食べかすが挟まることがあり、こまめなケアが必要です。さらに大きく歯を移動させるので、その分痛みや違和感が出やすいです。

■ワイヤー矯正の費用
ワイヤー矯正は他の矯正方法と比べると費用が安いとはいえ、60万円~100万円程度が目安です。ワイヤー矯正のデメリットは目立つ点ですが、ワイヤーやブラケットを目立たない透明なものに変更できます。その場合、費用は割高になります。

裏側矯正

裏側矯正とはブラケットを歯の裏側に装着して、目立たなくする矯正方法です。歯の表側にブラケットとワイヤーを装着するワイヤー矯正に比べ、さらに強い力がかかるため、異なるワイヤーや装着方法が用いられます。
また、ワイヤー矯正では「ダイレクトボンディング」と呼ばれる方法で、歯の表側にブラケットを装着していきます。これは歯科医が目で確認しながら作業をしますが、裏側矯正ではそれが困難です。そのため、「インダイレクトボンディング」という方法が用いられます。この方法では、まず歯科技工士が患者の歯列に合わせて作成した模型に、ブラケットとワイヤーを装着します。その後、模型に基づいて実際の施術をします。通常のワイヤー矯正よりも工程が多い分、より多くのコストがかかるのです。

■裏側矯正のメリット
表側に施すワイヤー矯正と異なり、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に装着するため目立ちません。また、歯の表側に比べて裏側では唾液が常に循環し、その殺菌作用などにより虫歯になりにくいです。さらに、表側のワイヤー矯正と同じく、一度装着したらマウスピースのように取り外す必要がありません。

■裏側矯正のデメリット
裏側にブラケットを装着するため、舌が接触して痛みを感じたり、口内炎ができたりすることがあります。特に、装着後約1週間程度は違和感があるでしょう。
また、矯正装置を歯の裏側に装着しているため、歯ブラシなどのケアがしにくいです。虫歯になりづらいとはいえ、ケアが不要であるわけではありません。矯正装置に食べかすなどが挟まった状態にしておくと、虫歯や歯周病の原因となります。
さらに、発音がしづらくなる場合があり、装着後1週間~1カ月程度は、矯正装置を装着した状態での発音になれない人が多いといわれています。
加えて、上述したようにワイヤー矯正に比べ、費用が割高です。症状によってどの程度割高か異なりますが、一般的には表側に矯正装置を装着する場合に比べ、費用が1.5倍程度増える可能性があります。

インビザライン矯正とワイヤー矯正の併用

インビザライン矯正とワイヤー矯正には、それぞれ特徴があります。お互いのメリットを引き出し、デメリットをできるだけ減らす方法が、インビザライン矯正とワイヤー矯正の併用です。
ワイヤー矯正のメリットは、インビザライン矯正では対応が難しい重度の叢生、出っ歯、受け口に対応できる点です。また、対応自体は可能であっても、インビザライン矯正だけでは歯を動かすスピードが緩やかで、矯正に時間がかかる場合もあります。ワイヤー矯正を併用することで、インビザライン矯正では対応ができなかった症例に対応でき、治療期間も短縮できるのです。
症状により、どのくらいの期間短縮できるかは個人差がありますが、全体矯正の場合はインビザライン矯正のみだと、平均30カ月かかるといわれています。しかし、ワイヤー矯正と併用で約6カ月の短縮が目指せます。また、部分矯正であればインビザライン矯正のみだと平均して約12カ月かかりますが、ワイヤー矯正との併用で約3カ月の短縮ができる可能性があります。
「ワイヤー矯正を併用すると結局目立ってしまうのでは」と、懸念する人もおられるでしょう。その場合は、裏側矯正の採用も1つの方法です。また、表側矯正でも目立たないホワイトワイヤーを使用できます。

まとめ

インビザライン矯正ができない、難しい症例について解説しました。重度の出っ歯、受け口、叢生の場合は、マウスピースによって歯並びの見た目だけよくしても、顎の骨に原因があるため根本的な解決にはなりません。また、インビザライン矯正は顎の骨が健康であることが前提の治療であるため、重度の歯周病やインプラントが多数入っている場合にも対応が困難です。
インビザライン治療で対応が難しい場合は、治療範囲が広いワイヤー矯正を選択できます。

また、ワイヤー矯正だと目立ってしまって困るという人には、歯の裏側にブラケット・ワイヤーを取り付ける裏側矯正もあります。さらに、インビザライン矯正とワイヤー矯正のお互いのメリットを発揮するために、2つの矯正方法の併用も可能です。
いずれにしても、歯列や症状は人によって大きく異なるため、どの矯正方法を選択したらよいのか分からないという人は実績が豊富な、信頼できる歯科医に相談してみることをおすすめします。

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非公開: 林 伸至
東京先進医療クリニック
歯科・口腔外科 診療部長
歯科新宿院院長 歯科医師
非公開: 林 伸至
Shinji Hayashi

学歴
2003年 愛知学院大学歯学部 卒業
経歴
2003年 医療法人林歯科医院 勤務
2009年 ロイヤルデンタル林 開業
2016年 中之島デンタルクリニック 院長
2018年 東京先進医療クリニック 入職
資格
Invisalign CERTIFICATE

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