前歯だけマウスピース矯正できる?部分矯正について解説!
最終更新日:2023.3.2

前歯だけマウスピース矯正できる?部分矯正について解説!

歯列矯正は基本的に自由診療となるため、高額な費用がかかるケースが多くあります。そこで、少しでも費用を抑えながら、気になる歯並びをきちんと矯正できる、部分矯正を検討してみてはいかがでしょうか?ここでは、歯列矯正の中でもマウスピースを使い、前歯だけの矯正が可能かについて解説します。

前歯だけ矯正することはできる?

結論からお伝えすると、前歯だけの矯正は可能です。前歯だけを矯正するような部分矯正には、ブラケットやワイヤーを使用するものと、マウスピースを装着して矯正する方法の2種類あります。ここではマウスピースを使って、前歯だけ矯正できるのかについて説明します。
一口にマウスピース矯正といっても、歯科医院によって取り扱うマウスピースは異なります。マウスピースの代表格は、米アライン・テクノロジー社が開発した「インビザライン」で、前歯だけといった部分矯正も可能です。その場合は「インビザラインGOシステム」を採用します。
マウスピース矯正には他にも「アソアライナー」や「エシックス」、「キレイライン矯正」などがありますが、どの治療法でも基本的に前歯だけの矯正は可能なケースが多いとされています。

部分矯正について

マウスピース矯正にはいくつかの種類がありますが、ここではインビザラインを例にとって部分矯正について説明します。
前述したようにインビザラインGOは、前歯だけの部分矯正方法です。インビザラインは治療前に、口腔内光学スキャナーで歯列を読み取り、3Dソフトを使って治療期間に歯がどのように動くかを予想して治療計画を立てます。インビザラインGOの治療期間は半年程度で、その間は歯の動きに合わせてマウスピースを1~2週間ごとに交換します。
部分矯正が可能かは、奥歯の噛み合わせの状態によります。前歯の歯並びが多少悪くても、奥歯の噛み合わせがしっかりとしており、顎の骨格にも問題がないようなら、前歯のみの部分矯正が可能です。具体的には前歯の歯列が、次のような状態ならインビザラインによる部分矯正が可能とお考えください。

・ 軽度の叢生(そうせい)や乱杭歯(らんぐいば)の状態で、前歯が重なり合っている場合
・ 前歯の間にすき間がある「正中離開」の状態
・ 前歯の一部が「捻転歯(ねんてんし)」と呼ばれる、歯がねじれた状態の場合
・ 過去に矯正治療を受けたものの、保定装置(リテーナー)の付け忘れなどで後戻りした場合

いずれも不正咬合が軽微な場合のみ、マウスピースによる部分矯正が可能です。

前歯だけを部分矯正したい!気になる期間や費用は?

部分矯正がおすすめの人

費用を抑えたい人

矯正治療にはどうしても費用がかかります。しかし部分矯正であれば、全体矯正に比べて費用を抑えられます。ただし、治療効果が出なければ本末転倒ですので、自分の症状が部分矯正で治療可能かどうか、歯科医に検査・診断してもらうようにしましょう。

治療期間を短くしたい人

マウスピース矯正は毎日装着したり、外したりしなければなりません。仕事や学校に通いながら、マウスピース矯正を続けるのが煩わしいと感じる人は、治療期間が短い部分矯正がおすすめです。
実際にどのくらい短くなるかは、症状や選択するマウスピース矯正の種類によります。上述したインビザラインの場合では、全体矯正なら2~3年程度、前歯だけの部分矯正であれば半年程度が目安です。

前歯の印象を変えたい人

前歯が出っ歯だったりガタガタしたりしていると、歯並びが気になって思いきり笑えないと感じている人は少なくありません。奥歯の噛み合わせは問題なく、前歯の歯並びをきれいにしてイメージを変えたい方にも、部分矯正は向いています。

矯正後の後戻りを治したい

インビザラインGOが適用できる1つの症例に、矯正後の後戻りがあります。そのため、過去に矯正をしたものの、後戻りに悩まされている方にもマウスピースを使った部分矯正はおすすめです。

補綴(ほてつ)治療をしたい

補綴治療とは歯が抜けてしまった場合に、インプラントや入れ歯などで人工歯を補う治療法です。補綴治療のために歯を動かすときも、部分矯正が行える場合があります。

部分矯正をおすすめできない人

奥歯の噛み合わせに問題がある人

前歯の部分矯正は審美目的がメインですが、奥歯の噛み合わせに問題があるような場合は、機能回復を重視するべきといえます。食事の際などに噛み合わせが悪いと、お口の健康だけでなく全身の機能にも影響を与えるため、全体矯正でしっかり治療しなければなりません。

矯正治療に抜歯が必要な人

矯正治療の際に抜歯が必要なのは、歯を移動させるスペースを確保するためです。つまり、叢生や乱杭歯などの症状が重度で、前歯のマウスピースだけで対応できないときは、抜歯をした上での全体矯正が検討されます。

歯周病や虫歯がひどい人

部分矯正に限ったことではありませんが、歯周病や虫歯がひどい人は矯正治療が行えないことがあります。マウスピースで歯に少しずつ力をかけて動かしていくため、重度の歯周病で歯槽骨に影響が及んでいる場合は、歯が抜けてしまう危険性があるからです。矯正を希望するときは、歯周病や虫歯をまず治療してから矯正治療となります。治療ができないほどひどいときは、抜歯も検討されます。

マウスピースの種類や部分矯正の種類によって適応できる範囲が違う

ここまで説明してきたように、マウスピースにもインビザラインをはじめさまざまな種類があります。また、部分矯正にも前歯すべてを対象にする場合もあれば、1~2本の矯正で足りるケースもあります。そのため、最終的には歯科医に相談して、自分の症状であれば部分矯正が可能なのか、どのタイプの治療が必要なのかを確認しましょう。

マウスピース矯正の種類はいくつある?選ぶポイントや矯正成功のポイントをご紹介

部分矯正の種類

ワイヤー矯正(表側)

ワイヤー矯正は歯にブラケットとワイヤーを装着し、歯に力をかけて徐々に動かす方法です。全体矯正も含め、マウスピース矯正に比べると幅広い症例に対応しています。
ワイヤーを表側に装着するタイプは、矯正装置が目立つのが難点です。また、矯正装置に食べかすなどが挟まりやすく、毎日のブラッシングを徹底しなければ虫歯の発症リスクが高まります。ただし、表側に装着しているため、自分でも鏡などで確認しやすく、ケアは比較的しやすいでしょう。

ワイヤー矯正(裏側)

同じワイヤー矯正であっても、矯正装置を裏側に装着するタイプです。ブラケットとワイヤーが見えないため目立ちにくいですが、歯科医の高い技術が必要になるといわれています。また、表側のワイヤー矯正と比べると、費用は割高になります。さらに歯の裏側に矯正装置があるため、発音する際などに舌が金属の装置に当たりやすく、傷つけてしまうこともあります。

マウスピース矯正

マウスピース矯正も裏側矯正と同じように、目立ちにくいのがメリットでしょう。ワイヤー矯正で用いられる素材は金属が多く、アレルギーを発症する恐れがありますが、マウスピースはプラスチック製なのでその心配がありません。
また、マウスピースは自分で取り外しができるため、食後のブラッシングなどのケアがしやすい特徴があります。しかし、付け忘れると望んだ効果が得られません。マウスピースは毎日20時間程度の装着が必要であり、自己管理がとても重要な矯正方法です。さらにマウスピースを紛失したり、破損したりするリスクもあります。

それぞれの部分矯正について比較

上記で紹介した3つの部分矯正について、費用や期間、特徴などについて比較してみましょう。

ワイヤー矯正(表側) ワイヤー矯正(裏側) マウスピース矯正
費用 9万円~50万円程度(税込) 18万円~60万円程度(税込) 10万円~77万円程度(税込)
治療期間 3カ月~7カ月程度 3カ月~7カ月程度 5カ月~1年半程度
特徴 ・目立ちやすい
・費用を抑えられる
・ケアがしやすい
・痛みを感じやすい
・目立ちにくい
・費用がかかる
・ケアがしにくい
・痛みを感じやすい
・目立ちにくい
・費用がかかる
・ケアがしやすい
・痛みが少ない
ワイヤー矯正(表側)
費用 9万円~50万円程度(税込)
治療期間 3カ月~7カ月程度
特徴 ・目立ちやすい
・費用を抑えられる
・ケアがしやすい
・痛みを感じやすい
ワイヤー矯正(裏側)
費用 18万円~60万円程度(税込)
治療期間 3カ月~7カ月程度
特徴 ・目立ちにくい
・費用がかかる
・ケアがしにくい
・痛みを感じやすい
マウスピース矯正
費用 10万円~77万円程度(税込)
治療期間 5カ月~1年半程度
特徴 ・目立ちにくい
・費用がかかる
・ケアがしやすい
・痛みが少ない

※費用や治療期間は個々の症例によって異なります。あくまでも目安とお考えください。

前歯だけのマウスピース矯正について

形について

前歯だけを矯正するといっても、前歯2本だけにはめるマウスピースを、治療に使用するわけではありません。他の歯と整合するように、マウスピースが作成されます。

費用相場について

マウスピースを使った部分矯正の費用は、前述したように10万円~70万円程度が相場です。価格帯にかなり幅がある理由は、歯列が人それぞれ大きく異なる点と、どのマウスピースを使用するかによって費用に違いが出るからです。そのため、費用が気になる方は歯科医院で診断してもらい、どのくらいかかるかを歯科医と納得のいくまで相談しましょう。

マウスピース矯正の費用に関しては、以下の記事もご参照ください。

マウスピース矯正の費用・値段は?料金総額・種類ごとの費用目安を紹介

矯正にかかる期間

矯正にかかる期間は5カ月~1年半程度であり、費用相場と同様にかなり幅があります。そもそもマウスピース矯正は、ワイヤー矯正よりも歯を動かすスピードが遅いため、前歯だけの部分矯正でも平均して、半年程度かかるといわれています。「“前歯だけの部分矯正だから数カ月で終わるはず”と思っていたのに、治療を開始したら長期間かかった」とならないように、費用や治療期間も事前にしっかりと確認しましょう。

マウスピース矯正の期間に関しては、以下の記事もご参照ください。

マウスピース矯正の治療期間は?他の矯正治療とも比較!

前歯だけのマウスピース矯正が増えている理由

前歯だけのマウスピース矯正は、「噛み合わせ機能を正常に回復」ではなく、審美目的がほとんどです。他の人から奥歯はほとんど見えませんが、笑ったときに前歯の歯並びが与える印象は大きいため、前歯だけのマウスピース矯正が増えているものと考えられます。

前歯だけマウスピース矯正するメリット

全体矯正よりも短期間での治療が可能

前歯だけマウスピース矯正をする場合、治療期間は5カ月~1年半程度といわれています。インビザラインの中でも、部分矯正に特化したインビザラインGOは、平均すると半年程度で治療が完了しますが、全体矯正の場合2年~3年に及びます。つまり、全体矯正を選択した場合、前歯だけのマウスピース矯正にくらべて、4倍~6倍もの時間がかかるのです。

全体矯正よりも低コストで治療が可能

前述の表に示されているように、前歯だけのマウスピース矯正には10万~70万円程度の費用がかかるとされています。マウスピースにもさまざまな種類があるため一律にはいえませんが、例としてインビザラインとインビザラインGOを比較してみます。
インビザラインGOで使用するマウスピースは最大20枚で44万円程度ですが、インビザラインでは枚数の制限なしでマウスピースを使用できるものの、費用は88万円程度になります。つまり、コスト面で比較すると前歯だけのマウスピース矯正に比べて、全体矯正は倍のコストがかかります。

患者さまへの負担が少ない

前歯だけのマウスピース矯正であれば、費用を抑えたり治療期間を短くしたりできるため、患者さまの負担を減らせます。しかし、矯正治療期間中の負担はそれだけではありません。マウスピース矯正は毎日20時間程度の装着が必要で、食後のケアにも気を使います。また、付け忘れが続くと、想定した効果を得られません。そうした毎日の負担を減らし、できるだけ早く治療から解放されるために、お口の状態によっては前歯のみのマウスピース矯正がおすすめです。

前歯だけマウスピース矯正するデメリット

簡単な症例しか対応できない

奥歯の噛み合わせに問題があるような症例では、機能回復が必要になるため、前歯だけのマウスピース矯正では対応できません。叢生や出っ歯などの不正咬合も軽度であれば部分矯正を選べますが、重度の場合は全体矯正が必要になります。また、前歯だけの部分矯正で審美面は改善されても、歯ぎしりや発音は十分な改善がなされないリスクもあります。

後戻りしやすい

前歯だけ歯列を整えれば審美的に問題ないように思えても、実際は全顎が関係しているケースも少なくありません。もしそうなら、せっかく数カ月の時間をかけて部分矯正しても、マウスピースを外した後に徐々に元の状態に戻ってしまうでしょう。
こうした事態を避けるためには、部分矯正か全体矯正か決定する前に、歯科医にレントゲンなどでしっかりと、口腔内の状態を調べてもらうことが大切です。

期待していたような歯並びにならないこともある

全体矯正は、前歯・奥歯すべてを含めて歯列を調整するのに対し、前歯だけのマウスピース矯正だと矯正治療終了後に、バランスや仕上がりが悪くなってしまう恐れもあります。一部だけを動かすと、別の歯が思わぬ方向に動いてしまい、期待していたような歯並びにならないこともあるからです。もっとも、マウスピース矯正の中でもインビザラインは、3Dシミュレーションで矯正のプロセスを予測しながら治療計画を立てるため、そうした予想外のリスクを抑えられます。

まとめ

マウスピースによる部分矯正には、たくさんのメリットがあります。費用や時間の節約に加えて、治療期間中のストレスや痛みも減らせます。また、前歯は人に与える印象を大きく左右するため、マウスピースで前歯を矯正すれば人前で自信をもって笑ったり、話したりできるようになるでしょう。
しかし、全体矯正に比べて審美的側面に重きを置いている治療であることは否めません。噛み合わせや発話など、機能面の回復に関しては思ったような効果が出ないこともあり、慎重な検討が必要です。信頼できる歯科医と相談し、メリットとデメリットを理解した上で、自身に合った矯正方法を選びましょう。

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監修ドクターの紹介

非公開: 林 伸至
東京先進医療クリニック
歯科・口腔外科 診療部長
歯科新宿院院長 歯科医師
非公開: 林 伸至
Shinji Hayashi

学歴
2003年 愛知学院大学歯学部 卒業
経歴
2003年 医療法人林歯科医院 勤務
2009年 ロイヤルデンタル林 開業
2016年 中之島デンタルクリニック 院長
2018年 東京先進医療クリニック 入職
資格
Invisalign CERTIFICATE

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