
睡眠中の歯ぎしりは自分だけではなく、家族にとっても悩みの種です。また、睡眠中のため自分で気づくことが難しく、解決・改善が遅れてしまうこともあります。ここでは、歯ぎしりの原因について詳しく説明し、その解決・改善方法についてもご紹介します。
歯ぎしりの5つの原因
ストレス
歯ぎしりの要因の7~10%は、ストレスが関わっているといわれています。人間は浅い眠りと深い眠りを繰り返しており、深い眠りについている間は筋肉の動きが抑制されています。それに対して眠りが浅い間は筋肉の動きが抑制されず、咬筋と呼ばれる頬の筋肉が動いて歯ぎしりが起きるといわれています。
ストレスは睡眠の質を下げ、眠りが浅くなる原因のひとつです。人の身体は自律神経の交感神経と、副交感神経の働きの影響を受けています。日中の明るい時間帯は活動モードである交感神経が優位に働き、夜になるにつれて休息モードの副交感神経優位へと切り替わります。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れなどによって、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかず、夜になっても交感神経が優位のままとなりスムーズに入眠できないのです。
さらにスムーズな入眠に必要な、メラトニンと呼ばれるホルモンがあります。メラトニンは幸せホルモンとも呼ばれる、セロトニンから生成されることが知られています。しかし、常にストレスにさらされているとセロトニンを分泌する神経の働きが弱まり、結果としてスムーズな睡眠へと導いてくれるメラトニンの分泌量も減ってしまうのです。
こうした自律神経やホルモンの乱れが睡眠の質に影響を及ぼし、結果として睡眠中の歯ぎしりにつながってしまいます。
飲酒・喫煙
歯ぎしりは睡眠が浅いときに引き起こされると上述しましたが、睡眠の質に影響を与えるのはストレスだけではありません。飲酒することでよく眠れるというイメージを持っている方は多いようですが、実際はその逆です。
確かにアルコールの摂取によって、眠りに就くまでの時間は短縮できます。しかし、入眠した後は時間が経てば経つほど、アルコールによって眠りが中断されます。なぜなら、アルコールが分解されるときに体内で発生する、アセトアルデヒドが深い睡眠への移行を阻害するからです。
さらに、寝る前の喫煙も睡眠の質を低下させます。タバコに含まれているニコチンによりアドレナリンが分泌され交感神経が優位になるからです。交感神経の働きにより、脳は眠りに入るどころか覚醒してしまうのです。
噛み合わせや骨格の影響
歯の噛み合わせや、骨格の影響も考えられます。先天的な形状が影響している方もいますが、歯科治療による詰め物、老化による歯のすり減りが原因で噛み合わせが変化しているなど、後天的要因が影響しているケースもあります。
遺伝
はっきりとした原因は明らかになっていませんが、家族を対象にした研究から歯ぎしりには遺伝的要素も関係しているのではという見方も有力です。
子ども特有の歯ぎしり
子どもの時期だけ、歯ぎしりが見られることがあります。そのほとんどは乳歯が抜け、永久歯に生え変わる際の不快感が原因のようです。その時期が過ぎて歯ぎしりがなくなれば、特に心配する必要はないとされています。
歯ぎしりの種類
一口に歯ぎしりといっても、さまざまな種類があります。主な3つのタイプの特徴をみていきましょう。
グラインディング
一般に多い歯ぎしりは、「グラインディング」と呼ばれるものです。「グラインド(grind)」には、「臼(うす)で挽く」「細かく砕く」「ギシギシ擦る」などの意味があり、グラインディングも「上下の歯をギシギシと擦り合わせる」のが特徴です。
多くの人に見られる歯ぎしりですが、歯へのダメージも大きいといわれています。これが習慣になると歯がどんどん削れて、平らになってしまう恐れがあります。
クレンチング
「クレンチ(clench)」とは「食いしばる」の意味があり、クレンチングは上下の歯を力いっぱい噛みしめるタイプの歯ぎしりです。グラインディングはギシギシと音を立てますが、クレンチングの場合はぐっと食いしばるためあまり音が出ません。
そのため、本人はもちろん周囲の人に気づいてもらえず、発見が遅れがちです。わたしたちが起きている間、上下の歯が嚙み合っている実質的な時間は1日わずか5分程度、長い人でも20分程度といわれています。そのことを考えると、睡眠中に無意識のうちに長い時間噛みしめることで、歯にどれだけ大きな負担がかかるかお分かりいただけると思います。
タッピング
「タップ(tap)」には、「音を立てて踏む」「軽く叩く」を意味します。つまり、タッピングとは上下の歯をカチカチと音を立ててかみ合わせる動きを指し、寒さで歯が震えているような状態を指します。グラインディングやクレンチングと比べて、一番症例数が少ないといわれていますが、一晩タッピングすると顎や歯に与えるダメージは非常に大きくなります。
歯ぎしりが体に与える影響
歯に与える影響:歯の消耗・欠け
歯ぎしりによって、歯そのものが大きな影響を受けます。睡眠中、無意識のうちに行われる歯ぎしりは、日中の噛みしめよりも大きな力がかかるといわれています。それを一晩で数十分にもわたり行い続ければ、歯がどれだけ大きな影響を受けるかは容易に想像できます。
歯ぎしりが続くと歯のすり減り、欠け、根っこから折れることもあります。天然の歯だけでなく、治療で装着したセラミックやインプラントなどの義歯も、歯ぎしりによってすり減ります。
また、歯に力がかかると、亀裂が入ることがあります。亀裂部分から歯の内部に細菌が侵入すると神経が壊死してしまい、強い痛みが引き起こされます。
さらに、歯そのものだけでなく、歯の周囲にある「歯根膜」や他の組織にも過大な負担がかかり炎症を引き起こしたり、歯が揺れて歯周病が悪化したりなど、さまざまな影響が予想されます。
顎に与える影響:顎関節症になる可能性
歯ぎしりは顎にも影響を与え、最悪の場合は顎関節症になる恐れがあります。顎関節症とは顎関節の炎症や関節内部の異常が原因で、口を開けた際に痛みを感じたり、口の開け閉めでカクカク音がしたりする症状のことです。さらに症状が進むと、顎の関節にある関節円板のずれや変形の原因となります。
頭部に与える影響:片頭痛
歯ぎしりの際、顎から側頭部につながる「側頭筋」に負担がかかります。歯ぎしりが続くと側頭筋が緊張した状態になり、片頭痛を招く恐れがあります。
肩に与える影響:肩こり
顎から首や肩は筋肉がつながっているため、歯ぎしりは肩周辺にも影響を与えます。肩の筋肉が緊張して強張ると、肩こりを引き起こす原因のひとつとなります。
歯ぎしりを解決・改善する方法
睡眠の質を高める
歯ぎしりを招く原因として、睡眠の質の低下が挙げられます。
歯ぎしりの原因でストレスが関係しているとお伝えしましたが、ストレスは睡眠の質を下げる要因なので、できるだけストレスをため込まないように心がけましょう。
また、生活習慣の見直しで自律神経の働きを整えることも大切です。
生活のリズムを整え、規則正しい生活を送るのが理想です。とはいえ、仕事や育児、家事などで多忙な現代人にとって、規則正しい生活を送るのはなかなか難しいといえます。
そのため、日中にできるだけ日光を浴びる、バランスの良い食事や夕食に消化の悪いものは避ける、適度な運動など、できることから始めましょう。
また、湿度や温度、明るさ、音の大きさなど寝室環境の見直しもおすすめです。加えて、就寝前はスマートフォンやタブレット、テレビ、ゲーム機などの使用も避けましょう。これらのデジタル機器から発するブルーライトは、睡眠に必要なメラトニンを減少させてしまいます。
その他、横向きやうつ伏せで寝ると歯ぎしりの症状を悪化させる可能性がありますので、できるだけ仰向けに寝るのが理想です。
認知行動療法
認知行動療法とは自身の行動を観察し、どのようなときに歯ぎしりをしているか自ら分析してコントロールして改善していく方法です。睡眠時に歯ぎしりをする人は、日中起きている時間帯も知らず知らずのうちに歯ぎしりしていることが多いようです。そのことに気づいた場合には、意識してその癖を改善するようにします。見える場所に「歯ぎしり注意」などと書いたメモを貼っておくのもひとつの方法です。
歯科医で治療する
自分で工夫してもなかなか歯ぎしりが改善されないようなら、歯科医に相談してみましょう。歯科医がすすめるひとつの方法として、マウスピース(ナイトガード)の使用があります。マウスピースを装着していれば、ストレスなどが原因で睡眠中歯ぎしりをしても、歯が摩耗したり欠けたりすることを防げます。
また、グラインディングをするときに発生する音もなくなるため、一緒に寝ている家族も安眠できるでしょう。さらにマウスピースは保険が適用されるため経済的にも負担が大きくなく、手軽に行える点もメリットといえます。
歯科医院で行える別の治療として、噛み合わせの改善があります。マウスピースやワイヤーを使った矯正治療で歯並びを整えたり、すり減り・欠けたりした歯に詰め物をする補綴(ほてつ)治療も選択肢のひとつでしょう。また、歯ぎしりをするときに使う咬筋の緩め、食いしばりを改善するためにボトックス治療という方法もあります。
顎や首、肩の筋肉の緊張によって痛みが生じている場合は、マッサージなどの緩和処置や病院によっては漢方、アロマテラピーなどを利用する、リラクゼーションを目的とした治療を取り入れています。
自分で簡単にできる歯ぎしりチェック
睡眠中の歯ぎしりはなかなか自覚できず、治療が遅れることがあります。しかし、気づかないうちにも歯ぎしりによって歯はどんどん削られ、損なわれてしまいます。歯ぎしりが気になる方は、セルフチェックをしてみましょう。
・朝起きたときに顎が疲れていたり、肩こりを感じたりなどの違和感がある
・鏡で口の中をチェックしたときに歯がすり減っているように見える
・歯に亀裂がある
・同居の家族に歯ぎしりしているといわれたことがある
・銀歯などの詰め物が取れたり、折れたりする
・歯に痛みを感じる
・頬の内側や舌の側面に歯型がついている
・冷たい飲み物で歯がしみる
・日中、集中しているときに歯を食いしばる癖がある
まとめ
歯ぎしりの原因、種類、歯ぎしりによって体が受ける影響、解決・改善方法をご紹介しました。セルフチェック項目で歯ぎしりが疑われる場合は、ストレス軽減や睡眠の質を向上させるための工夫をしてみましょう。それでも改善されないときは、歯科医院で歯がすり減っていないかなどを検診してみてはいかがでしょうか?
東京先進医療クリニックについて

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監修ドクターの紹介

学歴
2003年 愛知学院大学歯学部 卒業
経歴
2003年 医療法人林歯科医院 勤務
2009年 ロイヤルデンタル林 開業
2016年 中之島デンタルクリニック 院長
2018年 東京先進医療クリニック 入職
資格
Invisalign CERTIFICATE
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