前歯だけを部分矯正したい！気になる期間や費用は？

前歯は他人に見えやすい箇所であり、歯並びが悪いと見た目が気になってしまいますよね。歯科矯正には前歯だけの部分矯正があり、治療期間や費用を抑えられます。この記事では、どのような症例で部分矯正が可能か、またその期間や費用について詳しく説明します。

部分矯正とは？

歯科矯正には、全体の歯を対象に時間をかけて動かしていく「全体矯正」だけでなく、気になるところを部分的に動かす「部分矯正」があります。部分矯正は「MTM(Minor Tooth Movement)」、「プチ矯正」などと呼ばれることもあり、その特徴は全体矯正に比べて短期間、低コストで行える点です。

前歯だけの部分矯正の治療期間

歯科矯正は患者様の症状や、歯の状態によって治療に要する期間が異なりますが、一般的に全体矯正には1～3年かかるといわれています。それに対して、部分矯正は2カ月～1年程度で治療可能だとされています。

前歯だけの部分矯正の費用

費用も治療期間と同じく一概に断定できませんが、30～60万円程度が目安です。全体矯正が60万～150万円程度かかることを考えると、約半分の費用となります。

前歯だけの部分矯正を行う症例

具体的に、どのような症例において前歯だけの部分矯正が可能なのか、以下ご説明いたします。

軽度乱杭歯

「軽度乱杭歯（らんぐいば）」とは、「叢生（そうせい）」と呼ばれる症状のひとつで、顎に対して歯が大きすぎるため、歯が重なり合って、歯並びが凸凹になっている状態を指します。「八重歯」も、軽度乱杭歯のひとつです。見た目の問題以外にも、歯が重なり合っているために食べかすが詰まりやすく、虫歯や歯周病にもなりやすいといわれています。

軽度出っ歯

出っ歯はその名の通り、前歯が前方に飛び出している状態を指します。一般的に出っ歯には、「上顎が大きすぎる」「下顎が小さすぎる」「前歯が前方に突き出している」の３つのタイプがあるといわれています。先天的と遺伝的要因で出っ歯になることもありますが、幼少期の癖や生活習慣によって引き起こされる後天的なものもあります。具体的には指しゃぶり、口呼吸、爪をかむなどです。それらを長年続けていると前歯の後ろから力がかかり、前歯が徐々に前へ飛び出してくるのです。

軽度反対咬合

反対咬合（はんたいこうごう）とはいわゆる「受け口」のことで、「下顎前突（かがくぜんとつ）」とも呼ばれます。前歯をかみ合わせたときに下の歯の全部、または一部が上の歯よりも前にある状態を指します。
反対咬合のタイプも3つあるといわれており、「上下の顎骨の位置や大きさ」「歯の生える位置や角度」またはその両方が含まれる場合です。出っ歯と同様で遺伝的要因によるケース、幼少期の癖や呼吸の仕方が影響することもあります。例えば口呼吸をしていると、呼吸時に舌の位置が落ち込んでしまうため、下顎を自然と前に突き出してしまいます。こうした習慣が積み重なり、反対咬合を招く恐れがあります。
反対咬合は見た目だけでなく、かみ合わせの悪さから顎関節症を発症したり、食べ物がうまくかみ切れない不便さを感じたりする方もいます。

すきっ歯（空隙歯列/正中離開）

すきっ歯は専門用語で「空隙歯列（くうげきしれつ）」、もしくは「正中離開（せいちゅうりかい）」と呼び、歯と歯の間に隙間がある状態を指します。叢生と異なり歯が重なっているわけではないため、食べかすは詰まりにくく、歯ブラシによるブラッシングはしやすいです。そのため虫歯や歯周病のリスクが、とりわけ高くなるわけではありません。ただし、すきっ歯の状態では見た目が気になり、人前で話すことに自信がもてない場合には部分矯正による治療が可能です。
すきっ歯を引き起こす原因の多くは、舌癖だといわれています。例として、舌を前歯の裏側から押し当て続けると、徐々に歯と歯の間に隙間が生じます。無意識の舌癖は、部分矯正を行っても後戻りする原因となるため、癖の改善も必要です。また、先天的に歯の横幅の合計が顎の幅よりも大きい場合や、歯の形が小さすぎる場合などもすきっ歯の原因になります。

オープンバイト（開咬）

オープンバイトは専門用語で「開咬（かいこう）」といい、奥歯をかみしめても前歯の上下がかみ合わない状態を指します。前歯で食べ物をかみ切ることができないため、奥歯に過大な負担がかかってしまいます。そのため、奥歯に詰め物をしている場合は取れやすくなったり、知覚過敏を引き起こしたりすることもあります。
オープンバイトの原因として挙げられるのは、幼少期の指しゃぶりによって前歯の発育が不十分だという点です。また、顎に対して歯が大きすぎるなど先天的な原因も考えられます。

部分矯正の種類

上述したような症例の場合、部分矯正によって治療が可能です。部分矯正には、大きく分けて２つの方法があります。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正はワイヤーをブラケットと呼ばれる装置に通し、動かしたい方向に力をかけて徐々に歯列を調整する方法です。ワイヤー矯正のメリットは、ほとんどの症例に対応できる点でしょう。ただし、ワイヤーを直接歯に装着するためどうしても目立ってしまいます。目立ちにくい歯の裏側にワイヤーを装着する裏側矯正もありますが、費用が割高になります。また、後述するマウスピース矯正より、痛みが出やすいこともデメリットのひとつです。
部分矯正をワイヤー矯正で行う場合、費用の目安は8～45万円程度といわれています。裏側矯正だと17万～55万円程度です。

マウスピース矯正

マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを装着して、徐々に歯を動かしていく治療方法です。メリットは、ワイヤー矯正と比較して目立ちにくいという点です。また、取り外しも可能なため、お手入れもしやすいといえるでしょう。しかし、1日20～22時間程度装着していないと望む効果が得にくいといわれており、装着時間をきちんと守ることが必要です。また、ワイヤー矯正に比べて対応できる症例が少ないこともデメリットのひとつです。
部分矯正をマウスピース矯正で行う場合、費用の目安は10～70万円程度が相場となっています。ワイヤー矯正、マウスピース矯正いずれも費用は全体矯正に比べて抑えられますが、最終的には個々の歯の状態や矯正が必要な程度によって変わるため、まずは歯科医への相談をおすすめします。

当院のマウスピース矯正についてはこちら

部分矯正のメリット

部分矯正のメリットは、以下のようなものがあります。

１．全体矯正に比べて費用や時間を抑えることが可能
ワイヤー矯正、マウスピース矯正いずれの場合も、使用する装置は少なく、治療期間が短ければそれだけ費用を抑えられます。

２．前歯の気になる部分を矯正することで審美的な効果が得られる
矯正の主な目的が見た目の改善ならば、部分矯正のみで行える場合があります。歯並びが気になり、人との会話やコミュニケーションに支障をきたしている方は、部分矯正を視野に入れて見ましょう。

３．全体矯正に比べて負担が少ない
矯正装置が前歯だけのため、全体矯正と比べると食事やお手入れの際の負担が少ない傾向にあります。

部分矯正のデメリット

部分矯正のデメリットとして、以下のようなものがあります。

１．軽度な症例しか対応できない
部分矯正では、上述した軽度の症例しか対応できません。例えば不正咬合が重度である場合は、全体矯正が必要です。

２．健康な歯に影響を与える可能性がある
部分矯正の場合は前歯だけを治療するため、どうしてもスペースに限界があります。本来であれば奥歯を含めて全体で調整したほうがよい場合も、前歯部分だけで無理に歯を削ったり抜歯したりすることもあり、歯が弱くなるケースが考えられます。

３．かみ合わせが改善できない
歯科矯正は主に、審美目的と機能改善の２つの目的があります。部分矯正では審美目的が重視され、歯のかみ合わせを整えるという機能改善がおろそかにされがちです。そのため見た目はよくなったものの、食事の際のかみ合わせや発音などは改善されないこともあります。

まとめ

部分矯正で対応可能な症例と、部分矯正の期間や費用について説明しました。時間と費用を抑えられる点で部分矯正は魅力的ですが、機能改善の観点から見れば全体矯正も選択肢のひとつとして考えられます。
どのような目的で歯科矯正を行うのか、自分の症状には部分矯正と全体矯正のどちらが適切なのかを決めるには、専門家である歯科医への相談が必要です。「治したいのは前歯だけだから部分矯正で十分」と決めつけることなく、上記の情報を参考にまずは歯科医院に足を運んでみてはいかがでしょうか。