歯科矯正の種類・費用は？メリット・デメリットと併せて紹介

歯並びが悪いと、人と話すことに自信が持てなかったり、歯磨きがしづらいことから歯周病や虫歯の原因になったりと悩みやトラブルにつながることがあります。歯並びをきれいにするための方法が歯科矯正ですが、「治療に長い時間がかかるのでは？」「費用がかかるのでは？」と疑問が尽きません。以下では歯科矯正の種類、それぞれのメリット・デメリット・費用についてご紹介します。

歯科矯正（歯列矯正）とは？

悪い歯並びや噛み合わせのことを専門用語で「不正咬合（ふせいこうごう）」といいます。歯科矯正は不正咬合をきれいな歯並びにし、きちんと噛み合うようにするための治療のことです。矯正装置を使って歯やあごの骨にゆっくりと力をかけて動かし、歯並びや噛み合わせを整えていきます。

歯が動くメカニズム

矯正装置を使って歯を動かすとは一体どういうことでしょうか？歯ぐきには歯を支えるための歯槽骨（しそうこつ）があり、歯槽骨と歯の根の間には歯根膜（しこんまく）という薄い膜があります。その厚さは約0.2ミリといわれています。

矯正装置により歯を動かすと、動く方向の歯根膜は縮み、逆側は引っ張られることになります。それにより、縮んだ側は破骨細胞の働きで骨がなくなり、引っ張られた側は骨芽細胞により新しく骨が再生されます。この繰り返しにより歯が少しずつ動いてきます。そのスピードは1ヶ月に0.5～1ミリといわれていますから、歯科矯正には長い時間がかかるのです。

歯科矯正の種類別：メリット・デメリット・費用相場

歯科矯正は用いる矯正装置によってメリット・デメリット・費用が異なります。以下では代表的なワイヤー矯正、マウスピース矯正、裏側矯正の３つを取り上げます。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる四角い金属の矯正装置を取り付け、ワイヤーによって歯を動かしたい方向に力をかけることにより歯列矯正する方法です。

ワイヤー矯正のメリット

1つ目にワイヤー矯正は矯正装置を常に装着しているため、マウスピースのように取り外す必要がないという点です。取り外しの手間がかかりませんし、付け忘れの恐れもありません。

2つ目にワイヤー矯正はさまざまなケースに対応可能という点です。歯を3mm以上大きく移動させるなど、口元を大きく変えたい場合にはマウスピースでは対応が難しいですが、ワイヤー矯正であれば可能です。歯をいろいろな方向に移動させたい場合もワイヤー矯正が向いているといえるでしょう。

3つ目にほかの矯正方法より歯の移動速度が速いのもワイヤー矯正の特徴です。

ワイヤー矯正のデメリット

1つ目に目立つことです。常に装着していますし、歯の表面に取り付けるため、歯と同じ色の装置を使用しても、ほかの矯正方法より目立ってしまいます。

2つ目に歯磨きがしづらい点があります。ワイヤーを意識して丁寧に毎日手入れをしないと汚れがたまってしまいます。

3つ目に痛みがあります。装置を装着してから1～2日は強い痛みを感じることがあります。また、装置が原因で口内炎ができることもあります。

ワイヤー矯正の費用相場

ワイヤー矯正はマウスピース矯正、裏側矯正と比べると費用が最も安いといえます。ワイヤーとブラケットを装着し、60～100万円程度とお考えください。ホワイトワイヤーや透明なブラケットにすると金属製のものより目立ちませんが、その分割高になります。

マウスピース矯正（インビザライン）

マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを装着して歯列を矯正する方法です。中でも世界中で採用されている主流のマウスピース矯正は、アメリカで開発された「インビザライン 」です。コンピューターの計算によって作られたオーダーメイドのマウスピースを2週間から1ヶ月ごとに交換して歯を動かしていくことにより、さまざまな症例にも対応可能です。
リンク：https://www.admd.jp/oralsurgery/invisalign/

マウスピース矯正のメリット

1つ目に透明な素材で作られているマウスピースを被せるため目立たないことです。ワイヤー矯正だと目立つのが気になる方でも、マウスピース矯正だと周りから気付かれにくいです。

2つ目に取り外しが可能なことです。ワイヤー矯正だと食べかすが詰まる心配がありましたが、マウスピース矯正であれば食事や歯磨きの際に取り外しが可能です。

3つ目にマウスピースは透明なプラスチック素材でできているため、金属アレルギーの心配がないということです。ワイヤー矯正は金属を常時装着する必要があるため、アレルギーの不安がある方には向きませんが、マウスピース矯正ならその悩みも解消できます。

マウスピース矯正のデメリット

1つ目にワイヤー矯正に比べて適応できる症例に限界があるという点です。インビザラインによって対応症例の幅が広がったとはいえ、骨格に大きなズレがある場合や歯を大きく移動させたい場合には向かないといえます。

2つ目にマウスピースは取り外し自由とはいえ、一定時間装着しないと効果を望めないという点です。一般的に装着時間は20時間以上といわれていますから、食事と歯磨きの時間以外は付けておく必要があります。そのため、しっかりと自己管理できない方には向いていないともいえます。

3つ目にワイヤー矯正や裏側矯正よりも経験の少ない歯科医でも治療できるため、思ったような矯正効果が出ない場合もあるという点も覚えておきましょう。

マウスピース矯正の費用相場

マウスピース矯正の費用相場はワイヤー矯正よりもやや高めで80～100万円程度といわれています。もっとも歯列のどの部分をどれだけの範囲カバーするかによって費用は変わってきます。

裏側矯正

裏側矯正とはブラケットを歯の裏側に装着して矯正を行う方法です。そのため舌側矯正とも呼ばれます。歯の表面に装着するワイヤー矯正と比べて、隣り合ったブラケット同士の距離が短いため強い力がかかることになります。そのためワイヤー矯正とは異なるワイヤーや装着方法を採用します。

また、歯の裏側は表側よりも複雑な形をしているため、ブラケットの接着方法も異なります。表側に接着する場合は直接目で確認しながら行う「ダイレクトボンディング」と呼ばれる方法で行われますが、同じ方法では裏側への接着は困難です。そのため、一般的に「インダイレクトボンディング」と呼ばれる接着方法を採用しています。ブラケットを接着しワイヤーを通した理想的な模型を歯科技工士が製作し、それを用いて実際の歯にブラケットを接着していく方法です。裏側矯正がワイヤー矯正よりも多くの手間とコストがかかるのはそのためです。

裏側矯正のメリット

1つ目にマウスピース矯正と同じように目立たないという点です。マウスピース矯正の場合は対応できる症例に限界がありますが、裏側矯正はワイヤー矯正と同じようにさまざまなケースに適応可能です。

2つ目にマウスピース矯正とは異なり、常に装着しているため取り外す必要はない点が挙げられます。そのため付け忘れの恐れもありません。

3つ目に虫歯になりづらいというメリットもあります。歯の裏側に矯正装置を接着するため食べかすや汚れがたまりやすく、歯磨きもしづらいのではと思われるかもしれません。しかし、歯の裏側は表側に比べて唾液が常に循環し、その殺菌作用や再石灰化作用などにより虫歯になりにくい環境なのです。もちろん、これは歯の裏側のお手入れが不要ということではありません。

裏側矯正のデメリット

1つ目に費用が高いという点です。前述したように裏側にブラケットを接着するためにはオーダーメイドの模型を製作するなどのプロセスが不可欠なため、その分コストがかかります。

2つ目に発音しづらい点があります。装着する前にはほとんど意識していませんが、日本語の発音の中には歯の裏側に舌をあてて発音する音があります。装置が気になり違和感がありますが、1週間から1ヶ月程度で慣れる方がほとんどのようです。

3つ目に歯磨きが難しい点も挙げられます。歯の裏側は虫歯になりにくい環境とはいえ、食べかすが装置にくっついた状態だと気になりますし、表側以上に歯磨きのトレーニングが必要になります。

裏側矯正の費用相場

裏側矯正は見えにくく、しかも対応できる症例も幅広いため、費用は高くなります。相場は120万円～200万円といわれています。

まとめ

以上、歯科矯正の代表的な方法であるワイヤー矯正、マウスピース矯正、裏側矯正をご紹介しました。歯の状態は人それぞれ千差万別ですから、メリットとデメリットを考慮して、歯科医とも相談の上ご自身に合った最適な矯正方法をご選択ください。また、歯科矯正は原則として健康保険が適用されないため費用が高額になりますが、先天的な病気や症例と判断された場合は適用が可能なケースもありますので、併せて歯科医にご相談ください。